京都大学防災研究所 耐風構造研究分野

我々の研究室では、台風や竜巻などによる強風・突風災害の低減を目指して研究を行っています。具体的には、様々な風況下における構造物周りの気流性状、構造物の動的応答特性、構造物が被害に至る物理的過程の解明といった風工学的な課題と、被害発生による影響評価、効果的な減災手段の提案といったリスクマネジメント論的な課題に取り組んでいます。

風工学的アプローチでは観測・実験・数値シミュレーションに関する研究を展開し、リスクマネジメント論的アプローチでは、被害調査や方法論に関する理論的な研究を展開しています。また、資源としての風の有効利用に関する研究も行っています。これらの研究を通して、風と共存する建築と都市づくりの提案を行っています。

研究紹介

  1. 強風・突風により建築物が被害に至る物理的メカニズムの解明とそのモデル化
  2. 社会変化や気候変動を考慮できる強風リスク評価プラットフォームの構築
  3. 快適な風環境の創生および自然エネルギーの活用
  4. 強風被害調査とノンエンジニアド構造物の耐風性能向上手法の提案
強風・突風により建築物が被害に至る物理的メカニズムの解明とそのモデル化

台風による強風あるいは竜巻やダウンバーストによる突風は建築物に多大な被害をもたらします。これらの被害を効果的に低減していくためには、その被害のメカニズムを明らかにすることが重要です。風による被害といってもその被害形態は様々で、例えば、一般住宅においては屋根瓦の飛散、振動による疲労破壊、構造部材の破壊などが挙げられます。また、飛散物による窓ガラスの破損のように、一つの被害形態が別の被害を引き起こすという連鎖的な特徴もあります。

我々の研究室では、これらの被害のメカニズムを被害調査、風洞実験、材料試験、衝撃実験あるいは数値シミュレーションなどを駆使して明らかにしていきます。そして、建築物の耐風性能を評価するためのモデルを構築し、効果的な被害低減策を提案していきます。

実験・シミュレーション

図:数値流体シミュレーション(左)、ガラス衝撃実験(中央)、材料試験(右)

社会変化や気候変動を考慮できる強風リスク評価プラットフォームの構築

建築物を取り巻く風環境は常に変化しています。この原因は、都市における建築物の密集度あるいは高さの変化であったり、気候変動による台風や竜巻の発生・強度特性の変化であったりします。この研究では、ハザードモデルや建築物脆弱性モデル、影響評価モデルあるいは建築物や人口、産業などの地理的分布など、リスク評価に必要な要素を統合して扱える汎用的なプラットフォームを構築します。そして、これらのモデルを適宜組み替えることで、将来起こりうる強風ハザードの変化や社会構造の変化を考慮したリスク評価を行います。

プラットフォーム

図:リスク評価プラットフォーム

快適な風環境の創生および自然エネルギーの活用

都市における快適な風環境を創り出し、風力などの自然エネルギーを活用するための、風況予測手法の開発を行います。また、防風施設の最適な配置方法、風力発電、太陽光発電施設などの安全で効率的な運用方法を探ります。

ウインドファーム

図:ウインドファームの風力発電施設

強風被害調査とノンエンジニアド構造物の耐風性能向上手法の提案

高層建築物や大空間建築物あるいは先進国の構造物の多くは、工学的な知見に基づいて設計・施工されているエンジニアド構造物です。一方で、世界各国の風災害を見渡した時、被害を受けている大多数の構造物は、工学的な知見に基づかずに建てられている、いわゆるノンエンジニアド構造物です。したがって、地球上の風災害を減らしていくためには、このようなノンエンジニアド構造物の耐風性能をどのように向上させていくかが大きな課題です。

そこで、本研究では、方法論としてすでに確立されている、風洞実験・数値流体解析・材料試験・飛散物衝撃試験・構造解析といった耐風性能評価に関する手法を現地の建築物に対して適用し、現地の建築的特徴を失うことなく、連続的にその質的向上を目指しています。

これまでにフィリピンの台風被害調査を始め、東南アジア各国の一般住宅の耐風性能に関する調査を通して情報を蓄積し、現在、これらの国々のノンエンジニアド構造物の耐風性能モデルを構築し、改良耐風設計法についての研究を行っています。

ノンエンジニアド

図:フィリピンのノンエンジニアド建築